万葉集1682番歌は次のように訓まれている。 忍壁皇おさかべのみ子こに献たてまつる歌一首〈仙人やまびとの形すがたを詠めり〉〔献忍壁皇子歌一首〈詠仙人形〉〕 とこしへに 夏冬行けや 裘かはごろも 扇あふぎ放はなたぬ …More
万葉集1357番歌「足乳根乃母之其業桑尚願者衣尓着常云物乎」について
万1357番歌は難訓歌と呼ばれるほどではないがよくわかっていない。 足乳根乃母之其業桑尚願者衣尓着常云物乎 先行研究として比較的近年の注釈書からいくつか訓読文と現代語訳を拾う。 たらちねの 母ははがその業なる 桑…More
「弓食」(万2638)をユヅルと訓む理由
巻十一の「寄物陳思」歌に次のような歌がある。 梓あづさ弓ゆみ 末すゑの腹はら野のに 鷹鳥と狩がりする 君が弓ゆ弦づるの 絶えむと念おもへや〔梓弓末之腹野尓鷹田為君之弓食之将絶跡念甕屋〕(万2638) 「弓食」と書い…More
万葉集における「船装ひ」と「船飾り」について
万葉集中に、「船飾ふなかざり」、「船装ふなよそひ」と関係する歌は四首指摘されている。 八十やそ国くには 難なに波はに集ひ 船飾り〔布奈可射里〕 我あがせむ日ろを 見も人もがも(万4329) 右の一首は、足下郡あしが…More
万葉集における「足柄」の船表現について
万葉集巻十四に「足柄小舟」の歌がある。 百ももつ嶋 足柄あしがら小を舟ぶね 歩行あるき多おほみ 目こそ離かるらめ 心は思もへど(万3367) 一般に、「足柄小舟」は多くの島をあちこち漕ぎ廻る意と解されている。顕昭・…More
万葉集942番歌の「鵜にしもあれや 家念はざらむ」について
万葉集942番歌の「鵜うにしもあれや 家念おもはざらむ」については、諸説乱れ、なかなか要領を得ていない。 玉たま藻苅もかる 辛から荷にの嶋に 嶋しま廻みする 鵜うにしもあれや 家念おもはざらむ(万943)(注1)〔玉…More
万葉集3617番歌の「蝉」はツクツクボウシである説
万葉集中に「蝉せみ」という言葉を歌中に詠みこんでいるのは、遣新羅使の一行の道中の万3617番歌一首に限られる。 安あ芸国きのくにの長なが門との島にして礒いそ辺へに舶泊ふなはてして作る歌五首 石走いはばしる 滝もとど…More
万葉集の「幄」について(大伴家持作歌)─万3965・4089番歌─
大伴家持には「幄」字を使った前文、題詞の歌がある。 掾じょう大伴宿禰池主いけぬしに贈れる悲しびの歌二首〔贈掾大伴宿祢池主悲歌二首〕 忽たちまちに枉疾わうしつに沈み、旬を累かさねて痛み苦しむ。百神を祷のみ恃たのみて且…More
力士舞の歌
万葉集で鷺を直接歌った歌は一首である。 白鷺の木を啄くひて飛ぶを詠める歌 池神いけがみの 力りき士じ舞まひかも 白鷺の 桙ほこ啄くひ持ちて 飛び渡るらむ(万3831) この歌は、伎楽の一つの美女の呉女を追う外道の…More
十月(かむなづき)について
今日、十月の古語、カムナヅキ(カミナヅキ)については、神無月のことという中世の俗解が流布している。平安後期の藤原清輔・奥義抄に、「天下のもろもろの神、出雲国にゆきて、こと国に神なきが故にかみなし月といふをあやまれり」(…More
万葉集の鞘の歌について
万葉集に「鞘さや」という言葉の出てくる歌は三首、長歌、旋頭歌、短歌にそれぞれある。 大君おほきみの 命みこと畏かしこみ 見れど飽かぬ 平城なら山やま越えて 真木まき積む 泉の河の 速き瀬を 竿さをさし渡り ちはやぶる…More
枕詞「隠(こも)りくの」と「泊瀬(長谷)」の伝えるところ
「隠こもりくの」は泊はつ瀬せ(長谷、初瀬)を導く枕詞とされている。万葉集に、「隠りくの」が「泊瀬」にかかる例が十八例あるほか、「隠りくの 豊泊とよはつ瀬道せぢは〔隠口乃豊泊瀬道者〕」(万2511)が一例ある。コモリクノ…More
「石上(いそのかみ) 布留(ふる)」の修飾と「墫(もたひ)」のこと
万葉集で「石上いそのかみ(ソ・ミは甲類、ノは乙類) 振ふる」と続く歌は次のとおりである。 ➀石上いそのかみ 振ふるの山なる〔石上振乃山有〕 杉群すぎむらの 思ひ過ぐべき 君にあらなくに(万422) ➁石上 振の神杉か…More
三輪で杉の木を「斎(いは)ふ」のは、甑(こしき)による
万葉歌に「杉すぎ(ギは乙類)」が登場するのは以下の十二例で、神木(注1)と目されるのは➀~➈である。 ➀味酒うまさけを 三輪の祝はふりが 忌いはふ杉〔忌杉〕 手触てふれし罪か 君に逢ひ難き(万712) ➁御幣帛みぬさ…More
ヤマトコトバを学ぶ人のために
ヤマトコトバを学ぶ人がどのように学んだらよいか、参考文献や研究方法について述べてみたいと思います。 まず第一に、言葉とは何か? について考えなくてはなりません。そのために、 ウィトゲンシュタイン『哲学探究』 が良いので…More